リスキリングはどうやればよい

シニアの活動

リスキリングはどうやればよいでしょう。リスキリングをうまく実現するには、あまり大きな変化を求めず、少しずつ職替えをしていくのがよいのではないでしょうか。
最近よく耳にする言葉に「リスキリング」があります。要するにキャリア・チェンジというか、再教育して新しい分野に再就職することです。横文字なので、何か新しい概念に聞こえ、魅力的な感じがしますが、職替えということです。実際はリスキリングには相当な労力が必要ですし、再就職の道は険しく、特に、中高年のキャリア・チェンジは非常に厳しいものがあります。私も60歳直前で退職し、リスキリングをしました。
政府は需要の少ない分野から需要の高い分野に、主に不活性な中高年を再教育して、人材の活性化を図り、経済を活性化し、人口減少での人材不足を補いたいのが大体の趣旨でしょう。しかしながら、転職する当事者にとっては、実際は、地獄の選択です。多分、過去にもリスキリングは多くあったと思います。戦前戦後で繊維産業から機械工業へ、電力業界では水力から火力・原子力へ、最近は再エネ?(再エネは今一でしょうか?)、高度成長時代後に重工長大産業からエレクトロニクス産業、情報産業へのシフトなど時代の変化とともにありそうです。全く新しい業界が生まれ、みんな素人状態ならば救われる面もありますが、すでにある業界に挑戦する場合は、厳しい現実に直面することが予想されます。
私自身は製造業からソフトウェア産業へリスキリングを図っている最中です。正直いうと年齢もありますが、再就職先は見つからず、苦労も絶えず、非常に厳しい現実があります。やりがいや理想を求めても、生身の人間が耐えうる限界もあります。無理な選択はすべきではないと思います。心身が病んでからでは遅いですから。
一方で、リスキリングすなわちキャリア・チェンジの対極にあるのが、キャリア・ストレートという、これまでのスキルや実務経験を生かした転職あるいは仕事を続けることです。同じ仕事を続け経験を積む年功的な仕事観です。現在の業務や事業、業界が拡大傾向にあるときは、現状の延長で経験を積めばよいわけです。しかし、現在のように社会の変化の速度が速く、新しい産業が勃興してくる時代には、新しい分野や新しい仕事のやり方を常に取り込んで進化していかないと生き残れないわけですね。必然的にキャリア・チェンジ的になるのだと思います。この2-3年をみても、SNSの台頭やネット社会の急速な発展、AI技術の出現など目まぐるしく変化しています。
繰り返しですが、現在の職務や分野から別の職務や分野に移るキャリア・チェンジは、高い能力と強い意欲の持ち主でないとなかなか成就しません。キャリア・チェンジまでいかなくても、キャリア・シフト、キャリア・スライドという考えもあるようです。キャリア・シフトも異分野や職種に転職をさし、新しい分野や職種への転向を指すようです。キャリア・スライドは同じレベルの役職や職務内容への移動、つまり同じ会社内の異動や、同じ職務内容で他社へ転職などを指し、水平移動とも言えます。そこで、従来の経験やスキルから少しだけシフトしたりスライドしたりした仕事領域に移っていく、キャリア・チェンジ、キャリア・シフトとキャリア・スライドの間位が現実的だと思います。一般事務員に、いきなりIT業界でプログラマーになれと言っても無理でしょう。しかし、例えば、事務作業に、自動化ツールを導入してツールを使えるようになるのであれば実現できるかもしれません。また、全く異なる業態へのシフトではなく、関連業界へのシフトであれば商習慣も近く馴染み易いかもしれません。時間はかかるけれども少しずつ時代に合う方向にシフトしていくのがよいと思います。
なお、リスキリングには、専門学校や職業訓練校に通うと、効率的に進められる面があります。政府の補助も存在します。教育訓練給付制度、専門実践教育訓練制度などがあります。経済産業省のホームページに出ています。
(参考https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
これらの教育を受けている期間は失業保険(基本給付)も延長され、学費の補助が出る制度があります。専門実践教育訓練は訓練を修了すれば50%、再就職すれば追加で20%の費用補助が出ます。
ところで、中高年からの学び直しは、苦しいことも多いですが、本当のリスキリングの辛さは、再就職の際に、実務経験がないことです。新卒採用であれば実務経験がないのは当たり前ですが、40代、50代となって、全くその分野の実務経験がなく、学校に半年くらい通った程度では、まず採用してもらえません。40代、50代だと、それなりにお金も必要な年代なので、新卒よりも安い給料で一から勉強し始めるのも厳しい選択です。中小企業だけでなく大企業であっても、いくら政府が進める政策とはいえ、中高年の未経験者に一から仕事を覚えさせて活用する余裕はないし動機も薄いでしょう。
そこで、リスキリングした中高年の求職者は、学校で学んだ知識に加え、これまでの就業を通じて培かったポータブルスキルの提案が重要になります。ポータブルスキルとは、一般的な能力を指す場合が多く、協調性、交渉力、調整力とか、そういう能力というか経験を訴求していくわけです。直接的な換金性は乏しいですが、組織で働く場合には、意外と馬鹿にできない資質だと思います。やる気や開拓力やリーダシップを求めていても、実際は気遣いや協調性がないと仕事がうまくいかない場合も多いでしょう。多人数の組織ではチームワークがないと成果は出ないでしょう。全員がリーダーになるわけではなく、多くの人は組織を回す歯車でしょう。
まとめると、長い視野でリスキリングをとらえ、政府の補助も活用し再教育にも投資し、再就職は、大胆なキャリア・チェンジではなく、少しづつキャリア・シフト、キャリア・スライドをしつつ望む目標に近づいていくのがよいのではないかなと思います。

 

Gege-san-blogをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました